ひとことブックレビュー 
         

 このページでは、教育相談関係の本、読んでみてためになって面白かったオススメの本を、しつこくならない程度に紹
介していきたいと思います。

続 上手な登校刺激の与え方

小沢美代子 編著 本の森出版


 小沢先生の不登校への登校刺激についての著書の第二弾です。
 不登校のタイプ別にチェックリストなども作り、曖昧でわかりにくい不登校というものをできるだけわかりやすく把握できるように整理しようとするご苦労を感じます。ただわけがわからない不登校というものが、この本に接することで、理解してくれる先生は多いのではないでしょうか。ただ、読みながら、「小沢先生、わけのわからない不登校をこんなにきちんと整理しちゃっていいんですか!?」と思った時もありました。しかし、その辺は小沢先生の長年の経験に基づいたものなのでしょう。
 事例が豊富で、それだけでも興味深く読めます。小沢先生だけでなく、千葉県の教育相談の第一線で活躍されている先生方が執筆されています。





俺ルール

ニキリンコ著 花風社

 
 アスペルガー症候群についての著作や翻訳で有名なニキリンコ氏の、体験談に基づくアスペルガー症候群の紹介の書です。
 特別支援教育がさかんに叫ばれるようになって、マニュアル書がたくさん出回っていますが、マニュアルはいくら読んでもアスペルガー症候群の人の内面は理解できません。この本は、アスペルガー症候群の人の心の動き、特有のこだわりが、「ああ、なるほど」とわかるように書かれている好著です。これを読むと、同じマニュアルを読んでも応用がきくようになるのではないでしょうか。
 かたい話を抜きにしても、とにかく内容がおもしろい!




怠けてなんかない!    品川裕香 著 
                          岩崎書店
  
 LDの一種、ディスレクシア(識字障害)の体験談、それにその対応について書かれた本です。この本を読めばディスレクシアとはどんなものなのか、はっきりとイメージできるでしょう。
 体験談の中で、学校のディスレクシアに対する冷淡な対応がいくつか出てきて、教師の立場としては読んでいてちょっとつらくなります。
 「知的に遅れがないからさぼりだと見なされる」これってけっこうつらいものだろうなあという印象を持ちました。



          ADHD及び、その周辺の子どもたち
          学習障害及び、その周辺の子どもたち
                                   同成社
              
 ADHDや、LDの子どもたちに、にどう対応したらいいのか。教師向けにわかりやすく、イラスト多めに書かれています。「こういうときはこうする」というふうに具体的にマニュアル的に書かれている本です。教師はこの手の「すぐに使える即戦力」の本を好みます。そういう意味で非常に教師向けです。
 この本を最後まで読むと、発達障害がどういうものなのか、どのように指導していくのか、概要がつかめると思います。しかし、同時にマニュアルのパターン化したノウハウで対応していくのは限界があるのだということも少しずつ見えてくるのではないでしょうか。
 職員室の本棚に置いて、先生たちみんなに見てもらうといい本だなと思いました。




教育相談係 どう動き どう楽しむか 和井田節子著 
                       ほんの森出版

                   
 まつど教育相談研究会の会員でもある和井田先生の書いた、教育相談ガイドブックです。高校の現場で実際に教育相談担当として活躍する筆者の実践に基づいた、わかりやすく、学校現場の実態を知り尽くした筆者ならではの、きわめて具体的な教育相談ガイドとなっています。
 「教育相談係になったのだけれど、どうしたらいいかわからない」という先生のための、「教育相談入門マニュアル」というスタイルになっています。
 本書の構成は、まずは教育相談全般の理論から始まりますが、平易な文章に随所に具体例を交え、読者を飽きさません。今の学校の現状を一律とはとらえず、それぞれの学校の状態にあったところから、「step by stepでいきましょう」といった感じで少しずつ教育相談活動を活性化していくプロセスがイメージできるように書かれています。この本を読むと、多くの先生は、「自分にもできるかな?」という気にさせられるのではないでしょうか。
 とにかく、教育相談のガイド、マニュアルとしては、大変によく書かれているし、わかりやすくよくまとめられています。特に、高校の教育相談担当の人にとっては、手取り足取りの即戦力になることと思います。
 本書の中でいくつか事例が紹介されていますが、やや表面的にさらりと流している感じでした。その点は、この本がこれから教育相談を始めようという先生方を意識して、あえて深入りしなかったのでしょう。
 タイトルの「どう楽しむか」という表現、これはいかにも現場の教師っぽいタイトルだと思いました。教育相談という仕事はやりがいがあるし、それが機能すると喜びも楽しみもあります。それを少しでも多くの先生に知ってもらいたい、そんな気持ちも込められているのだろうなあなどと感じました。


LD・ADHD特別支援マニュアル  森 孝一著 明治図書

 特別支援教育がスタートし、いろいろなガイド本、マニュアル本が出ました。これもそのうちの1冊です。発達障害についての概要についての説明から始まり、特別支援教育というものがどのようなものであるかがていねいに書かれています。
 スクリーニング、プロフィール作成方法、アセスメントから実際の援助までの手順が具体的にわかりやすく説明されています。後半は、いくつかの事例が紹介されており、プロフィールを元に、どのような支援を行っていくかが具体的に示されています。
 学校に1人いるかいないかのけっこう重い発達障害を抱えた子を支援していくために、本書は具体的な指針を与えてくれるものだと思います。しかし、内容的にきわめて重い子にターゲットが絞られており、クラスや学年に何人かはいるような「こまったちゃん」を支援していくという面では、あまりヒントは得られないだろうというのが印象です。


解決志向ブリーフセラピーの実際  宮田敬一編   金剛出版
                 
  ブリーフセラピーによる心理療法の事例を紹介し、それに対して精神分析やクライエントセンタードなど、ブリーフセラピー以外の立場の人がコメントし、さらに治療者がリコメントするという構成で書かれています。このニューウェーブの技法をめぐって、なかなか激しいやりとりがあり、中にはほとんどけんか腰のものもあり、読んでいてスリリングでした。しかし、最後にブリーフセラピー側がリコメントするので、結局この本はブリーフセラピーを擁護する立場で書かれているのかなあという印象を持ちました。本書全体を通じて、ブリーフセラピーという新しい学派が既存の勢力に必死に立ち向かおうとする、気概のようなものを感じました。ブリーフセラピーというのは、本当に他の療法とは違うんだということがよくわかった気がします。



遊戯療法と子どもの心的世界 弘中正美著 金剛出版
                 
 遊戯療法について書かれた本の中では最もわかりやすく、その世界に入っていけそうな気持ちになる1冊です。
  カウンセリングがなぜ人の心を癒すのか、それは比較的容易に理解できますが、遊戯療法がなぜ子どもの心を癒す力を持つのか、なかなか実感として理解するのが難しいものです。この本を読むと、そのあたりのことが、じわりじわりと、そしてよーくわかります。弘中先生自身が扱った数々の事例が紹介されていますが、ずいぶんダイナミックなプレイセラピーをやるんだなあと驚かされます。中でも、箱庭に水道の水を引き、水びだしにしたり、箱庭の中にマッチで火をつけて「山火事」にしたりと、思い切った、危険ぎりぎりのことまでやっています。
 遊戯療法について学ぶと、小さな子どもたちのごっこ遊びや自由帳の落書きも、「その子の世界」として見えてくるような気がします。


内省心理療法入門  光元和憲 著  山王出版

                                          
 本研究会にも講師として何度も来ていただいている光元先生の著書です。
 後半は、となりのトトロを題材に、子どものファンタジーや親と子の関わり、成長について語られており、多くの人が興味深く読める内容となっています。
 本書は、あくまで「心理療法入門」なので、教育相談というよりは心理臨床についてかかれています。文章は平易でわかりやすいですが、内容はけっこう!専門的です。
 「内省心理療法」の中では、光元先生は従来のロジャース的技法をばっさりと批判しています。クライエント・センタードに慣れた多くの人たちは、この本を読んで相当とまどう人もいるかもしれません。そういう意味で、なかなか刺激的でショッキングな1冊ではないかと思いました。光元先生の「まんじゅう理論」に、フムフムとうなずきながらも、自分が勉強してきたカウンセリングの理論となじませ、共存させるのに一苦労・・・未だに読み返すたびに悩んでしまう1冊です。
 本書を読んでから、「グロリアと3人のセラピスト」をもう一度見てみると、おもしろいですね。


上手な登校刺激の与え方  小澤美代子 著   ほんの森出版

                    
 
 子どもが不登校になった時、どう対応したらいいのでしょうか?
 これは私たちが教師としてやっていく時に、避けては通れない課題でしょう。
 不登校について書かれた著書は数多く出ています。かたっぱしから買いあさっていったら積み上げて天井まで届いてしまうくらいあるでしょう。でも、この本の特徴は、内容が、きわめて具体的であるということです。「こういう時はこうする」「こういうケースではこうするのは避けた方がいい」という風に、わかりやすくノウハウが書かれています。その辺は、やはりさすがに現場の教師出身の小澤先生という感じで、教師が一番知りたいことをきちんと書いてくれています。千葉県子どもと親のサポートセンターで、長く不登校問題と取り組んでこられた豊富な経験があるからこそ、具体的にスパッと言い切ることができているのだなあと感心させられます。
  この本で小澤先生が強く言っているのは、教師の適切な働きかけ次第では、不登校は克服できる可能性を大いに持っているということです。
 ちなみに、昨年度、学級の子どもが不登校になり、困っていた先生に、この本に何ページかに付箋を付けて「読んでごらんよ」と渡しました。実際の現場で困っている先生方にすすめやすい1冊です。




                      
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